『昔の女』@新国立劇場

タニノがちょうど1年前に『前と後』のリーディング公演の演出をしたローラント・シンメルプフェニヒの戯曲『昔の女』を新国立劇場で観てきました。演出はペンギンプルペイルパイルズの倉持さんで22日まで上演されています。
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000064_play.html

それにしても、とてもいい上演でした! タニノの演出とはまた違う、倉持さん独特のキッチュな感じの演出スタイルが見事にはまっていました。
内容はリンク先にあるとおり、というか、タイトルどおり、夫の24年前の恋人が突然現れて家族が崩壊していく、というものなのですが、『前と後』と共通する部分が多く、この作品でも時間的な「前と後」や空間的な「前と後」(どちらかというと「内と外」といった方が適切かもしれません)の境界のゆらぎが物語内容レベル・話の語り方のレベルの双方に巧妙に仕込まれていて、シンメルプフェニヒの抜群のセンスの良さを感じました。
倉持さんの演出も、時間の前後関係の微妙なズレを演技の違いによってうまーく表現したり、空間的前後関係の曖昧さを舞台装置をつかって象徴的に表したりと、いい意味でストレートでわかりやすく、的確でした。詳しくは書けませんが、曖昧な空間が消滅するという物語上の展開を実に馬鹿馬鹿しいやり方で大胆かつシンプルに観客の視線の問題に落とし込んでいく、という最終場面の演出も、非常に効果的だったと思います。
ご覧になっていない方にはなんのこっちゃという話かもしれませんが、シンメルプフェニヒの作品も倉持さんの演出もとても興味深いものになっていますので、これはおすすめの作品です!
(吉)