ドラマリーディング打合せにて

先日『国際ドラマリーディングフェスティバル』の打合せがあり、

劇場スタッフの大久保さんと、長島確さんにお会いしました。

タニノが初めてリーディング形式の演出をするというので

作品の方向性や内容について、色々な話をしたのですが

そこでの興味深いおはなしをひとつ。



皆さんは「ドラマトゥルク」という職業をご存じでしょうか?

「ドラマトゥルク」とは、、

ドイツを中心として、ヨーロッパ圏の劇場では

かなり昔から存在する職業であり、演出家のサポートを

創作面から行う重要なポストの一つです。

長島さんは、日本ではまだほとんど知られていない

この「ドラマトゥルク」としてご活躍されている方の

お一人なのですが、

昨年行われた『遊び半分』(中野成樹+フランケンズ)

のポストパフォーマンストークで語られたタニノの

創作過程についてご興味をもっていただいていたそうで

様々な方向へと話は膨らみました。

トークでのタニノの発言を要約しますと、



「自分が芝居を作る時に意識するのは、当然お客さんであり、

入場料金です。入場料金が3,000円ならそれと同等の、

つまり若い人なら合コンとか、飲み会とか、、

それと同じくらい楽しんでもらうにはどうしようかと、

まずはそこから入り、それから劇団員数人で集まり、

今、面白いと思うコトや、次に何を見たいと思うか

などについて何回も会議をします。制作的な事から自由に、

また、演劇についてではなく、一般的に興味のあるコトを

羅列していき、自分たちの興味が一番惹かれる部分を

徐々に細かく抽出していき、脚本のエッセンスとして

取り入れて、それを構築していく、という作業をしています。」


それに対して長島さんは


「今の日本の演出家は、非常に孤独な状況で作業を

しています。演劇の現場では望むと望まざるに関わらず、

演出家が頂点に位置するので、短い稽古期間に一人で

プランニングをし、プロデューサーや俳優の要求を検討し、

最終的なジャッジをしながら指示をだし続ける、、。

そんな物凄い重圧にさらされていながら作業を行っている訳で、

そんな中でよい作品を作りつづけるというのは至難の業です。

そこでドラマトゥルクは、演出家のよき相談相手となり、

作品の質を高める共同作業を行っているのです。

それによって、作品が独りよがりのものになるのを防ぐことが

可能になり、演出家の重圧を減らすことで自由で活発なやりとり

を生み出し、結果的に演出家の方向性をより明確にし、

作品に厚みを与え、より深く、広がりのあるものにしていく

可能性をもっているのです。


日本ではまだ、こうしたドラマトゥルクの活動や、

ブレインストーミングを行いながら創作を行う有効性が

認知されているとは思いませんが、ペニノでは自然と

そういう作業が成立していったというのは、非常に興味深い

ことですね。」



タニノ 「結局、私は個性的であるということに懐疑的なんです。

作家の個性って何なんでしょうか。自分たちは芝居を作って

お客さんに見せる、、それが作品になるわけですから、

自分の思い入れを全面に見せても面白いと思う人はむしろ

限られている訳で、それは自分には興味のないことなんですよ。


それなら、まず他の人と自分の意見を擦り合わせることで、

生まれてきたモノからピックアップして、それを作品に起こして

いった方が、お金を払って見に来てくださった方に対して示しが

つくんじゃないかと、そう思います。」



長島さん「その、信用して意見を言い合える第三者というのが

まさにドラマトゥルクなんですよ。まあ、実際に現場に入れば、

相談相手としてだけではなく、何でもやるわけですが、、(笑)。」



タニノ「(笑)、、そうでしょうね、というか、それが職業として

成り立っているという現実に、自分は驚きました。それを

始めてしまったドイツ人というのは、きっと非常に合理的な人種

なんでしょうね。」


打ち合わせが終わっても、帰り道でお二人の談義は続いて

いました、、。



余談ですが、長島さんはお若く見えるのに非常に懐の広い、

落ち着いた方です。ただ、言葉の節々に演劇への愛情が滲み

出るような、そんな方ですので、きっと演出家が信頼を寄せる

相談相手としては大切な要素をお持ちなのだろうと思いました。

いつか、人生相談でもお願いしてみようかしらん^^。


それでは失礼いたします。