はこぶね新作『大きなトランクの中の箱』は、とにかくアレがすごいことになりそう・・・!!


はこぶね新作『大きなトランクの中の箱』、いよいよ稽古もはじまり、建て込みもはじまり、着々とできあがりつつあります。わくわく。



「はこぶね」というのは、もともと主宰タニノが住んでいたマンションを改造してできた、ペニノのアトリエの名前。
ところがこのマンションが解体されちゃう、ってんで、はこぶねもいっしょになくなっちゃうんですが、それでも「はこぶね新作」と銘打ってつくっているのが今作です。



このことについては、タニノからのメッセージをどうぞ。



開館してからちょうど10年目の今年、
劇団のアトリエ「はこぶね」が無くなります。
築年数も古く、老朽化が問題になっていたのですが、
先の大震災の影響で建物の内部構造に障害が多発し、
やむなく立て壊しをすることが決定しました。
残念でなりません。


はこぶねには我々が積み上げて来た知恵が詰まっています。
それは極小空間を夢幻の世界へと変貌させる知恵です。
そうして作られる異様な空間と漂う香気は、
風変わりな観客を惹き付けました。
そして多くの、はこぶね愛好者を生み出しました。


「はこぶね」は維新派の松本雄吉氏が名付け親です。
ここで生まれた小さな作品が観客の脳みそという大海原を
ゆらゆらと旅するイメージで命名してくださいました。
そうして開館から十年間で三つの作品が生まれました。


「小さなリンボのレストラン」「苛々する大人の絵本」
「誰も知らない貴方の部屋」です。


今回それらを一連にした作品
「大きなトランクの中の箱」を製作します。
はこぶねで生まれた三作品を一つの“箱”に押し込み、全て見せます。


我々が何を大切にして来たのか、創作において十年間
どのような時間の使い方をして来たのかを見て頂きたいと思います。
               
                          タニノクロウ


というわけなのです。(ちなみにこのメッセージはチラシにも載ってます!)


「はこぶねで生まれた三作品を一つの”箱”に押し込んでいる」。


そういうわけで、「はこぶね作品」なわけですね。
ただ、だからといって、これまでの作品のレビューというわけではありません。


あくまで、新作。

そして、いろいろとヤヴァイことになりそうですぜ・・・!! というわけで、ヤヴァくなりそうなところ、3つあげます。

その1 三つの作品をもとにした新しい物語。

基本、意味不明。でも妙に濃い。という、はこぶね作品のエッセンスそのままに、腹が減る。眠くなる。ムラムラする。という、今回もやっぱり欲望丸出しの作品に仕上がりそうです。

その2 4人の役者の奮闘ぶり。

舞台美術とともに稽古に時間がたっぷり使えるのがはこぶね作品。
前作『誰も知らない貴方の部屋』では四六時中練習してリコーダーをマスターした4人ですが、今回もタニノからハードな指令が出ています・・・。
か、過酷! でもかっこいいぜ!


そして何より、

その3 なに、この、装置っ・・・!!

詳しくは幕が開いてからのお楽しみですが、森下スタジオに入り浸ってつくってるからこその、この装置。
こういう装置は見たことない気が。
少なくとも自分はタニノからアイディア聞いたときにうっひゃーとなり、建て込みのときに唖然としましたぜ!




っというわけで、
庭劇団ペニノ はこぶね新作『大きなトランクの中の箱』、おったのしみに!(吉)



ご参考①:歴代はこぶね作品について開設したときの記事です↓
http://d.hatena.ne.jp/peningophilia/20111023/1319368980



ご参考②:前作『誰も知らない貴方の部屋』のトレーラーです↓



ご参考③:『誰も知らない貴方の部屋』でいただいた感想まとめです。
http://togetter.com/li/257293

チェルフィッチュ岡田利規さんの演劇論『遡行 変形していくための演劇論』最速かもしれないレビュー


チェルフィッチュ岡田さん初の演劇論。うまい具合にタイミングがあって、1月22日の発売初日に買えましたぜ!

遡行 ---変形していくための演劇論

遡行 ---変形していくための演劇論


早速読んだんですが、「演劇論」っていう言葉の響きからくる何やら難しげでポエティックな感じの本というわけではもちろんなくて、スラスラ読めます。


タイトルにあるように、現在から順々に岡田さんが考えていたことを遡っていくスタイルになっていて、これがとっても読みやすい! チェルフィッチュを継続的に見ている人ほど面白く読めるのではないかしら。


で、思うところもあったので、せっかくなのでごく個人的なレビューを書いてみようと思ったわけです。スミマセン記事タイトルは半分釣りです・・・。この本についての優れた書評はこの後たくさん書かれるだろうし、あくまで個人的に、ね。



なんでレビューを書いてみようと思ったかというと、まず、この本にペニノのことがちらっと出てくるのですね(!)。それは2008年にチェルフィッチュが参加したドイツのHAUで行われた「TOKIO-SHIBUYA: THE NEW GENERATION」というフェスティバルにペニノも参加していたからで、そのときの岡田さんの日記にペニノやタニノと話したことがちょろっと出てくるわけです。ちなみにそのとき自分も、ちょろっと岡田さんにお会いしてます。


ただ、それがメインの理由ではなくて、えっと、正直に言いますと、ちょうどその頃から、チェルフィッチュの作品の見方がよくわからなくなっていた・・・、というのがあるからなのです。


自分は、たぶん多くの人と同じく『三月の5日間』でガーンとやられて、その後の『労苦の終わり』『目的地』や『クーラー』といった作品も興奮しながら観て浮き立ってたんですが、ちょうどドイツに行くちょっと前に上演された『フリータイム』を観たときに、「あれ?」と思ってしまったのですね。そして最近『現在地』を見て、ついに「どう見たらいいの・・・?」と困ってしまったのです。単純におもしろいおもしろくない、ということではなくて、見方がわからなくて困っちゃう、というのが正直なところです。おまけに当然のことながらTwitterのタイムライン上には絶賛するツイートがぽんぽん流れてきて、余計に困惑する。っていうか、わかんないのがさびしい・・・。そんな具合だったわけです。


だから、岡田さんの演劇論が出たと知り、しかもそれが、現在から過去を遡って思考の変遷をたどっていくスタイルで書かれているとなると、「ああんもう! あれはどういうことだったの!? こぉれは読まなきゃっ!!」とめちゃくちゃテンションがあがったのでした。演劇の本でテンションあがったのも久しぶりでした。


まあ、実はちょうど自分が2008年に就職して、どんどん舞台を見る本数が減っていってるという現状があるので、それで見方がわからなくなってる、というのがたぶん真実で、演劇を見る体力とか勘とかがにぶっているのだとは思います。最近露骨にカラダがエンタメを求めていますもの。サラリーマンならそりゃ、テレビでも映画でも、ビールの泡みたいな心地よさに溺れたくなるのです・・・。


でも、むしろそういう状況だからこそ、「芸術って、何なのよ?」という意識は絶えずありました。もちろんそんな高尚なものではなくて、さすがにそういう意識なかったらペニノやれないだろっていう程度のものだと思うのですが。


ともあれ、岡田さんの演劇論、興奮しながら一気に読んだわけです。


まずペニノとの関連で言うと、『現在地』と『エクスターズ』って結構近い地平にあったんじゃないか、とか、安部公房の『友達』で岡田さんがやろうとしたことは実はペニノの『ダークマスター』と同じことじゃないか、とか、ここには書ききれない、思いも寄らぬ発見がいくつもありました。


そして岡田さんの文章がとてもクリアなので、こちらの思考もものすごくクリアになりました。


この本から受ける岡田さんの印象は、「精緻で、真摯な猜疑心の人」。身体、言語。東京、日本、欧米。既存の演劇、芸術そのもの。そういったものを、肩肘張らずに、きちんと疑ってかかること。それができてるから、遡れるぐらいの積み重ねがある。それがひとつひとつ理解できるから、こちらもとってもスッキリする。それがとても心地よかった。


でも、ひかっかることもあったんですね。


それはどういうことかというと、岡田さんの考えていることが、あまりに芸術の「なか」のことのように思えた、という点です。そりゃそうだろ、演劇論なんだから、とも思うんですけどね。


たとえば、『わたしたちは無傷な別人であるのか?』ぐらいから、岡田さんが「負け組世代」の若者の当事者意識をふまえて作品をつくるのをやめた、と語っています。それと符合するように、より「観客」を意識するようになって、「舞台上に演劇を立ち上げるのではなく、観客の中に立ち上げるのだ、という考えに基づいて作品に取り組むことで、かえって何でも表象できるようになった」とのこと。


ただ、岡田さんが「観客」を意識するようになった、と語っているにもかかわらず、自分には目の前の舞台が遠くにあるように感じてしまったことに、どうしてもひかっかってしまったのです。


もちろん、岡田さんの言う「観客」に対する意識と、自分が感じてしまったある種の距離感というのは、演劇論と演出の好みの話、ぐらいレベルの違う話なのかもしれません。あと、えー、自分、かつて岡田さんの「若者の当事者意識」に勝手に共感していたところもあったので、そういう当事者意識が抜けたときに、ある種の寂しさもあって遠く感じちゃう、という、より一層卑しい理由によるものかもしれないっす・・・。


しかも、帯に「社会に対して芸術のできる〈働き〉とは何か?」とあるぐらいで、しかもその答えが冒頭に明確に示されているので、芸術の「なか」のことだけが語られているわけではもちろんありません。


なんですが、なんですが。


根がアングラなペニノにいる身としては、そういう芸術をもぶち壊す猥雑さ、みたいなのがほしいじゃないですか。ビールの泡をも吹き飛ばすぐらいうっひゃー、ってなるようなことやりたいじゃないですか。なーんて思ってしまったのでした。


で、身も蓋もないですが、そういうふうに思えてよかったなと思いました。ハイ。そんなふうにぐるんぐるん、堂々巡りかもしれないけど、思考がまわりました。それに、また岡田さんの作品を観たくなりましたもの。今度はまた違うふうに見えるかもしれない、っていう期待感が湧きました。とてもいい読書体験だったわけです。


ちなみに他にも、日常の身体の過剰さという一点で、それまでの演劇を華麗に乗り越えちゃうあたりの超クールな感じとか、ギリシアの丘の話とか、ハッとするようなことがたくさん書かれてたんですが、そのあたりは書ききれないのでぜひ読んでみてください。


というわけで! こちらはこちらで次の4月のペニノが、楽しみです。


って、そんな悠長なこと言ってるヒマなく、もう動き出してます。ぜひぜひ、楽しみにしてくださいませ〜。
(吉)

2013年になりました。新作やります。

あっという間に、2013年。
皆さま、あけましておめでとうございます。


2012年は、『誰も知らない貴方の部屋』の舞台美術のタイルをひたすら塗って貼って塗って貼って、にはじまり


岩城京子さんの『東京演劇現在形:八人の新進作家たちとの対話』

東京演劇現在形 ? 八人の新進作家たちとの対話 Tokyo Theatre Today ? Conversations with Eight Emerging Theatre Artists

東京演劇現在形 ? 八人の新進作家たちとの対話 Tokyo Theatre Today ? Conversations with Eight Emerging Theatre Artists

にタニノのインタビューが載ったり、


『誰も知らない貴方の部屋』の大阪・フィンランド・スイス公演があって、


そして日仏学院との共同制作『ちいさなブリミロの大きな冒険』と、


他にもいろんな方々に出会ったり、Twitterでコメントをもらったり、おかげさまでとっても充実した一年でございました。


さて、ペニノの2013年は、4月から始まります。
完全新作です。


タイトルや場所は、もうちょっとしたら公開出来ますのでもう少々お待ちください〜。
(吉)

「NAMURA ART MEETING」にタニノクロウが参加します!

10月20日16時〜10月21日18時まで名村造船所跡地で行われる
「臨界の創造点」NAMURA ART MEETING にタニノクロウが参加します。

HPより以下抜粋です。
「NAMURA ART MEETING’04-’34は、クラブカルチャーの重要性に着目し、
Vol.00から「NAMURANITE」と題してクラブイベントを実施してきた。
しかしながらこの数年、関西を中心にしたクラブイベントや日本各地における各種施設への
大々的な規制と検閲が実施され、既存の枠組みを超えたオルタナティブな活動や拠点形成が困難な状況にある。
そこで今回は、主に1980年代から現在までのクラブカルチャーを概観し、
現代美術・音楽・デザインなどの創造行為への派生や相関関係を踏まえた、
オリジナルの【現代表現群の系譜】を構築し、
現代表現からみたカルチュラル・スタディーズの考察を試みる。」

お時間のある方、関西の方、ぜひ足をお運びください!
濃密なトークになること必至です。

◆「真夜中ミーティング」
今野裕一 × タニノクロウ / dj sniff / 山川冬樹

場所:製図棟2F・White Chamber
パフォーマンスデモ&トーク:21日 1:00〜3:30

詳細はこちら
http://nam04-34.jp/namuranite/

(小)

「ペニノ」という名の人物が登場する小説『コーリング 闇からの声』がおもしろい!


柳原慧さんの『コーリング 闇からの声』という小説をご存知でしょうか。


コーリング 闇からの声 (宝島社文庫 C や 1-3)

コーリング 闇からの声 (宝島社文庫 C や 1-3)


2007年の作品なのですが、実は、この作品に「ペニノ」という名前の登場人物が出てくるのです。しかも、作者の柳原さん曰く、名前が面白かったので「庭劇団ペニノ」から取ったとのこと!



ちなみに柳原さんは『パーフェクト・プラン』で第二回「このミステリーがすごい!」を受賞した作家さんです。最近ではレイトン教授のノベライズなどもやられています。


以前twitter上で柳原さんがツイートしていることから気づき、この小説を読んでみたのですが、まず、おもしろい! どんどん引き込まれます。


しかも、そんな展開のなかで、「ペニノ」っていう名前のヤツが重要な役割を果たしてる!!


というわけで、今回はこの小説内の「ペニノ」についてのエントリーです。



「ペニノ」って、なんかかわいいヤツ。


コーリング 闇からの声』のあらすじはこんな感じ。


死者が出た部屋の清掃を行う「特殊清掃員」として働く二人がある日請け負ったのは、風呂場に溶けて死んでいった女性の死体処理という凄惨な現場。
ようやく仕事を終えての帰り際、主人公は女の霊を見てしまい、さらに彼女が自分たちと同じSNSに参加していて、さらには極端な美容整形までしていたことに気づく。
果たして彼女は、自殺なのか他殺なのか? 
彼女からの「コーリング」は何を意味するのか――?


という感じで、ぐいぐい読ませます。


では、この小説に出てくる「ペニノ」ってどんなヤツかというと、




法医学の研究をやっている、スキンヘッドの僧侶。
普段はB系ファッションで、一見いかついヤツのようでいて、幽霊は苦手。




という実に愛らしいキャラクターです。


しかも元精神科医で、ヒップホップが好きで、一見いかついヤツのようでいて、幽霊は苦手なタニノとかなり近い(笑)。


このペニノ、小説内ではこんなふうに描写されています。


しばらくすると、ラッパーのような格好をしたペニノが、別棟から走り出て来た。
禿頭にNew Eraのキャップを被り、4 Ballers Clothingの黒いTシャツに迷彩柄のダボパン。どくろのネックレスまでしている。完璧にB系ファッションだ。


察するに、こんな感じの人でしょうか。



ちなみに主人公の二人はこの「ペニノ」についてこんな会話をします。

「誰よ、あれ」
「ペニノ」
「それはあだ名でしょ。本名は?」
「村上。下は忘れた」
「ペニノってどういう意味なの」
「さあなあ。たしかエッチな意味があったと思うんだけど、よく覚えてない」
「いいかげんだなあ」


これって、ペニノの劇を観に来てれた人がしてる会話のようにも聞こえちゃいます。

「誰よ、あれ」
「ペニノ」
「それは劇団名でしょ。名前は?」
「タニノ。下は忘れた」
「ペニノってどういう意味なの」
「さあなあ。たしかエッチな意味があったと思うんだけど、よく覚えてない」
「いいかげんだなあ」


こういう会話、実際よくあるんじゃないかしら・・・。皆さんしたことないですかね?


ちなみに他にも、


ペニノは目を丸くする。
ペニノはうなだれて、目の前の赤黒い肉をじっと眺めた。
ペニノは泣きそうな顔で言った。
ペニノは茶化すように言う。


などなど、とにかくペニノが出てくるたんびに、にやけてしまうのです。


さて、このペニノの「法医学」の能力が、物語の鍵をにぎるのですが――、それは読んでからのお楽しみということで!



「ペニノ」だけでなくペニノに通じる部分


この『コーリング 闇からの声』という小説なのですが「ペニノ」という名前の登場人物が出てくる以外にもペニノの作品に通じるかも、という部分があります。


この小説、「特殊清掃」「美容整形」「幽霊」「SNS」といった具合に、肉体がぐちゃぐちゃになるイメージが強烈にインプットされる一方で、心の部分は、本当のところ誰なのかわからないSNSのアカウントや幽霊といったかたちで、浮遊するイメージとして描かれます。


この心の部分は小説のなかではユング心理学にもとづく、「ペルソナとシャドウ」というかたちで表現されます。


「ペルソナ」は仮面のような、外向けのキャラクター。建前的な顔。「シャドウ」はそれをつくるうえで心の奥に抑圧した影の部分です。


肉体がぐちゃぐちゃになって、溶けてなくなってしまい、SNSのアカウントのような、浮遊する「ペルソナ」だけが残された状況で、主人公が目にした「幽霊=シャドウ」からの「コーリング」が何を意味するのかを探っていく。


この小説は、そういう筋立てになっているのですね。


実際、小説内の登場人物がユング心理学の本を読んでいて、章立ても「第一章 ペルソナ」、「第二章 シャドウ」というふうになっています。


この、ちょっと過剰な肉体感覚と、精神分析的な作品構造。


これって、『黒いOL』や『誰も知らない貴方の部屋』などのはこぶね作品など、かなりペニノ作品にも通じるところがあると思うのです。


だから、「ペニノ」という名前の人物が出てくるのは偶然でもなければただ名前が面白かったからというわけでもないのだなあ、としみじみ思うのでした。


というわけで、ペニノのことを知っていたら二倍楽しめる『コーリング 闇からの声』、オススメですぜ!
(吉)

劇団をアプリゲームにしたらどんな感じになるか考えてみたら、ちょっと前向きになった件。


タイトルのとおり、演劇っていうか、劇団をゲームにしたらどんな感じになるだろう、って考えたことがあって、もっかい考えてみたら、なんだか結果的に前向きな気持ちになったYO!というお話です。



「ゲーム発展国++」と「Campaign The Game」


きっかけは、もう1年以上前ですが、その頃ハマった、「ゲーム発展国++」というiPhoneアプリのゲームです。




http://itunes.apple.com/jp/app/gemu-fa-zhan-guo++/id381477230?mt=8


これ、どういうゲームかっていうと、ゲーム会社を運営するシミュレーションゲームなんですね。


ゲーム画面はこんな感じ。


雇う人や開発する商品のコンセプトを考えて、ソフトをたくさん売って、ゲームショーでの集客や賞の受賞を目指して、オフィスを増築して・・・っていう、けっこうリアルな設定になってて、ちゃんとゲームとしての面白さもおさえてて、あれよあれよという間にハマってしまったんでした。


実際、1年以上前の記事ですけど、

日本発の無名アプリ「ゲーム発展国++」に世界が注目
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1500X_V10C11A2000000/

こんな感じで、ゲームの賞にもノミネートされてます。


で、これをやっているうちに、「あれ? 劇団をゲーム化したらどんなふうになるだろう?」と思ったのでした。


ちなみに海外のものですが、最近では広告代理店のシミュレーションゲームなんかもあります(っていうか、これきっかえで、今回の記事思いつきました)。





これもなかなか設定がリアル。

世界初!「広告代理店の育成ゲーム」がiPhoneアプリで登場!
http://markezine.jp/article/detail/15982


うん、ちょっと生々しいぐらいがおもしろいんでしょうね。



「THE 劇団」というアプリを考えたら、いきなりつまづいた。


では! 劇団をアプリゲームにしたらどんな感じになるでしょうか。タイトルは、ひとまず「THE 劇団」にしましょうか。


って、ゲームをつくったことがないので、「ゲーム発展国++」にならって考えてみましょう。


この「ゲーム発展国++」は、いちおう20年の区切りが決められているんですね。
その期間で、どれぐらいの売り上げを達成できたか、それから、どれぐらいその年のゲーム賞の「グランプリ」を獲得できたか、を競うかたちになってます。


そういう「大きなゴール」のもと、毎回、各タイトルの開発〜発売という「小さなゴール」をクリアしていく設計です。


さて、この「大きなゴール」と「小さなゴール」を「THE 劇団」にあてはめてみましょう。


って考えたら、いきなり困っちゃいました。「小さなゴール」は毎回の公演ということでいいと思うのですが、「大きなゴール」をどう設定すればよいでしょか。





THE 劇団。
20年の期間、劇団を運営する主宰となる。
毎回の公演で、着実に集客しながら、しながら・・・、えーーーっと?




たしかに、演劇界にもいくつも賞はあります。


岸田戯曲賞読売演劇大賞朝日舞台芸術賞などなど。
いくつもあるんですが、小劇場とか新劇とか商業演劇とか、いろいろごっちゃになっていて、これだっていう一番の賞も定義しにくかったりして、難しいところなんですよね。。。




それから、売り上げの部分も難しいところです。


「集客」という小さなゴールはありますが、ゲーム業界ほど「販売本数」という数字が強くない。小劇場なんて、規模は小さいけどいい作品つくるぜ!っていう場だったりしますし。というか、ジャンルでいえばどちらかというと「芸術」だから、数字に還元するもんじゃない、っていう考え方も根強くありますしね。


かつては「小劇場すごろく」なんて言われていてすずなり〜本多〜紀伊国屋みたいなラインがうっすらあったようにも思いますが、今やたぶん公共劇場が全国的に増えてきたっていうのもあって、そういうラインはすっかりなくなっちゃったようにも思います。




と、いうことなので、ひとまずここは毎年発表される「日本演劇大賞」の受賞を目指し、
20年間での通算集客数を競うゲーム、と設定しておきましょう。



「小さなゴール」の設定からゲームの設計は、考えるとけっこう楽しい。


「大きなゴール」の設定は難しいところでしたが結構「小さなゴール」の設定と、ゲームの設計はわりと簡単です(って素人ですが)。




まず、主宰として、人員の確保に努めます。



■制作を雇います。

バランスタイプ/人脈タイプ(管理にやや難あり)/管理タイプ(人脈にやや難あり)、などと用意しておくと、幅が広がりそうです。
能力によって、与えなければいけない給与も変動するようにしましょう。



■役者を雇います。

男優/女優、の他に、主役タイプ、ヒロインタイプ、脇役タイプなどのパターンがあり、能力値(容貌・技術・度胸など)も決められていて、能力値が高いほど後半にならないと雇えない、などの仕組みを設けましょう。




次に、公演に取りかかります。



■予算を決めます。

雇用する制作、その公演で起用する役者の人数を決めて、予算を決めましょう。
このとき、チラシを何枚打つか、なども決めます。(実際、「ゲーム発展国++」もプロモーションの種類まで選べたりします)



■劇場をおさえます。

劇場がある地域ごとに、集客できる層に違いのある設計にするとおもしろそうです。
下北っぽい小劇場は、若者ばかり。名を馳せた劇団が運営する劇場だと、わりとバランスよく来て、郊外の公共ホールの小ホールだと、お年寄りの数が増える、なんていう設定です。



■作品のタイトルと設定、演出の方針を決めます。

タイトルはベタ打ちで入力するとして、設定は「ゲーム発展国++」にならって選択式で組み合わせで決めるようにしてみましょう。コメディ・サスペンス・ロマンス・社会派・青春・ホラー・ドキュメンタリー、などなど。
それと、演出の方針としては、小劇場系・新劇系・アングラ系・ダンス系・パフォーマンス系などの配分を決めるようにしましょう。
たとえば、小劇場系60%にアングラ系30%、ダンス系10%の演出配分。自分で書いててアレですが、なんとなく、うっすら想像できる感じがします。わりとテンポがよくて笑いが多めで、一人ぐらい白塗りの人がいて、幕間とかになんか踊りのシーンがある感じ??
ともかく、そんな感じで演出の方針を決めます。 



■ついに稽古に臨みます。

稽古期間に入ると、基本的には、毎週自動で成果が表れます。
ここで、タイトルの設定と演出の方針と、役者の配分・能力値の相性が関係してきます。その数値によって、役者ごとに稽古の成果が出る役者、出ない役者が出てくるわけです。
成果が出ていない役者に対しては「集中稽古」を選択出きるようにしてもよいかもしれません。ただし、一人まで。なので、誰に集中するかも選びどころになります。



■いよいよ公演です。

稽古でそれぞれの役者があげた成果ポイントの合計値が、公演の成否に関わってきます。
基準値をクリアしないと、チラシで補ったりしていない限り、劇場はガラガラになります。逆に、成果ポイントが基準値を大幅にクリアしていたら、劇場は満員になります。
ここで制作の「管理能力」に難があると、クレームが入り、劇団の「評判値」が下がるようにしておきましょう。
この「評判値」は、今後の集客にも影響する大事な数値です。





ランダムイベントも用意しよう。


この小さなサイクルの繰り返しで、毎回の公演の集客に成功し「評判値」を高めて劇団を成長させていく、というのが「THE 劇団」の基本のゲームプレイの流れになるでしょう。えっと、なんかふつうに面白そうな気がしてきますが、どうですかっ!(耳に手をあてて)


さて、ランダムで、
「制作Aが方針の違いから、劇団を離れることになりました」とか「男優Bが体調不良により、次回公演に参加出来ません」とか「女優Cが主宰のあなたを好きになってしまったようです」とかそんなイベントも発生するようにすると、ゲーム性が高まってよさそうです。なんか生々しいですが・・・。


もうすこしポジティブなものだと「偶然観劇した富豪Dが、資金援助を申し出ています」とか「助成金の獲得に成功しました」とか、そういうものもあるかもしれませんね。って、お金の話ばかり・・・。



一番考えたかったことは、ゲームや広告とのちがい。


ハイ、っていう「THE 劇団」っていうゲームアプリ考えたんです。長かったですね。ここまで読んでくれた人は何人ぐらいいるのでしょか。ああ、教えて偉い人!


ともかく、この「THE 劇団」というゲームアプリ、もし仮に面白くつくれるとしたらどんなことになるんだろう、っていうのが、実はいちばん考えたかったことです。


ようするに何が言いたいかというと、「ゲーム発展国++」にせよ広告代理店をゲームにした「Campaign The Game」にせよ、どちらも業界のパロディになってるんですね。パロディということは、ちょっとした風刺です。


なにせ、ゲームにせよ広告にせよ、もちろん演劇にせよ、どれもクリエイティブなものなはずなのに、コマンド入力という徹底的に型にはめこんだゲームにしてしまっているのですから。


「業界にありがち」なことを集めてゲームにしてしまう。それを体験したら、その後にでてくるものは、ゲームでも、広告でも、演劇でも、どれも「ははーん、あれか・・・」と思って見てしまう。ひどいときには、ゲームでコマンド入力でつくったもののほうが面白いんじゃね? なんてことさえあるかもしれません。


そして、幸か不幸か、演劇の「業界としての型」はゲームや広告よりも、弱いように感じました。


なにせ「大ゴール」を設定することが難しかったのですから。それは、劇団は企業ではない、ということが一番の理由でしょう。だからゲームや広告にくらべて、規模が小さく、型も生まれにくいと。


ただ、それはチャンスだな、と思ったわけです。


型があんまりないので、だったら型にはまらなくていいじゃないか、と。ゲームや広告だったら、企業としての制約上、型にはまったこともやらなきゃいけないこともあるでしょう。「予算がおりてしまったから」という理由で、なかば仕方なく作ることになったゲームや広告なんてたくさんありそうです。




ところが、そういう部分からは演劇はフリーです。
はい、フリーです。




って、よ、ようやく、 気づいてしまった!!!
30目前にして・・・!!!




あ、いや、まとめると、強引にまとめると、そういう「THE 劇団」というゲームアプリを想像したときに出てきそうな作品はあんまりつくりたくないな、ということです。せっかく「業界の型」からくる制約からは、わりとフリーでいられるわけなんですから。


こういうこと考えておくと、ぱっと何か思いついたときでも、「あー、それはあのアプリでいうと、コメディを素材に、小劇場系30%、アングラ系40%、ダンス系30%で、つくった作品っぽいな」という、型にはまっているかどうかのチェッカーになりそうですよね。よね。よねっ!!




ハイ、というわけで、これからもペニノはマンション改造して公演したりとか変なこと考えていくぜ! YEAH! BANZAI! って思ったのでした。

(吉)

『誰も知らない貴方の部屋』大阪公演、無事おわりました。

『誰も知らない貴方の部屋』、大阪はロクソドンタブラックでの公演、無事終了しました。5月2日〜6日、ゴールデンウィークど真ん中での公演でしたが、本当にたくさんの人に見て頂けて、とてもよかった! 嬉し!



『誰も知らない貴方の部屋』は、こんな感じの公演です。



みなさんのツイッターでの感想はこちらから。

庭劇団ペニノ『誰も知らない貴方の部屋』感想まとめ http://togetter.com/li/257293





劇団アトリエ「はこぶね」での公演を初めて、国内の他の場所で上演しましたが、ロクソドンタブラックの劇場の雰囲気(マンションと同じで靴を脱いで入る!)や阿倍野という土地柄(となりがラブホテル!)がとてもマッチしていて、いい感じでした。




こんな感じで、はこぶねのセットの解体から始まり、


大阪へトラックの荷積みを行い、

(例のアレのオブジェを表参道の街中を持ってトラックまで運んだんだぜ! 通りすがりの人に見られまくったんだぜ!)



大阪にて、劇場入り。

(はこぶねの看板も、ちゃんと劇場入り!)




こんな感じの、外観で、




こんな感じの、中身。




となりのラブホテルもタイル張り!




劇場の2階にはおしゃれなカフェが!

ここ、劇を見なくてもふつうに来られて、世界のビールもそろってて、しかもおいしい。いやお世辞抜きでそうでした。
新しいお客さんを呼び込むうえでもいい仕組みですよねー。




あと、大阪、メシが安くてうまいっす。串カツしかり。




コンビニの唐揚げもこんな値段設定。





しかし、個人的に思っていたのは、ロクソドンタブラックのロゴ。

ちょっとプレステのロゴに似てるな、って。



見ながら指がうずいてたんでした。って、そんなことより、次のペニノの情報ですが! もう少々お待ちください。決まり次第随時お知らせしてきます〜。
(吉)