演劇論って何でしょう。
久しぶりに太田省吾さんの演劇論集『プロセス』を手に取ってみました。ずいぶん前に買ったまま行方がわからなくなっていたのですが、ついさっき机と壁のあいだに挟まっているのを偶然見つけたのでした。
- 作者: 太田省吾
- 出版社/メーカー: 而立書房
- 発売日: 2006/11/25
- メディア: 単行本
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太田省吾さんの舞台、私はついぞ生で見ることはできなかったのですが、タニノは何回か見たことがあるそうで、あのゆーーーーったりとした劇(映像で見ると余計にそう思えてしまう)に随分と感銘を受けたようでした。もっとも、タニノがそのとき話していたのは舞台美術へのお金の掛け方が半端ないとか、「作品そのもの」というより「製作のスタンス」に関することが主だった気がします。幾分記憶は曖昧なのですが、タニノと最近見た舞台について話すと「作品そのもの」の話題より「製作のスタンス」に話が及ぶことが多いので、たぶんその時もそんな話をしたのでしょう。
そんなことを思い出しながら目の前のこの「演劇論」というジャンルの書物を見てみると、なんだか不思議な気分になります。「演劇論」って、何のためにあるんでしたっけ。そんなふうに感じてしまいます。もちろん、演劇の方法論を記したもの、といえばその通りなのでしょう。それは時に新しい演劇の誕生を象徴するものであったり、もしくは「上演の手引き」代わりになったりするものなのでしょう。そう思いはするもののどこかモヤモヤしてしまうのは、おそらく「そんなこと知ってもなあ」という気分がどこかにあるから。そんな気がします。これは私だけのことなのか、それとも世の中的なことなのか、それはわかりません。あと、だからといって太田省吾さんの演劇論がつまらないとか、そういう話でもありません。
ただ、ぼんやりと今どんな「演劇論」を読みたいか、と考えると、どうもそれは文学(論)的な要素が一切ないものであるような気がします。それは例えば、村上隆さんの『芸術起業論』や桝田省治さんの『ゲームデザイン脳』のような、どこかビジネスの匂いのするものなんじゃないでしょうか。
- 作者: 村上隆
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/06/01
- メディア: 単行本
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ゲームデザイン脳 ―桝田省治の発想とワザ― (ThinkMap)
- 作者: 桝田省治,帝国少年
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2010/03/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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さて、太田省吾さんの「演劇論」です。ふとタニノが韓国の人気グループ「KARA」のことでニヤニヤしていたのを思い出して「尻吹きの悲しみーー唐十郎の〈劇〉について」という一節を読んでみると、まあこれが面白い。身も蓋もありませんが、面白いものは面白い。
「〈お尻を吹く〉という行為を考案し、それが馬鹿げたことであるかどうかという判断を無化する切実さ、そして、そのことによってやっと手に入る〈情熱〉というもの、そしてそれを手放すまいと〈一生けんめい、ひたすら、やりつづける〉という持続に費やす筋力が〈悲しい〉のである。」(p.247)とな!
(吉)